名称と分類

様々な伊豆石の名付け 地域・用途・見た目

沢田石、小室石、徳倉石、多比石、小松石…「伊豆石」という呼ばれ方は古くから存在しますが、実は伊豆半島とその周辺部を産地とする石の総称です。細かく見ていくと、それぞれの産地ごとに地名を冠した名で呼ばれていることがあります。地元の人たちは、そこで採れた石に土地の名前を冠し大切に使用していました。

文献上でも様々な呼び方がある伊豆石ですが、用途を表した呼ばれ方をすることがあります。切石、割栗、間知石、カマド石…これらの呼び方は、近世から近代にかけて当時の人々が、石の特徴に応じて様々な適材適所を見つけて使用してきたことが伺えます。

地域によって様々な地質的な成り立ちがある伊豆半島はまさに石の博物館です。伊豆石の呼び方にはそれらの見た目が大きく関わっていることがあります。青石、白石という呼び方はその最たる例と言えます。江戸期の文書には青石、白石に対して冥加金や運上金などの税金をかけていた記述が残っています。現在でも、石工の方に伺うと「伊豆長岡と言えば青石!」などとその呼び方が残っていることが多々あります。

堅石

硬くて丈夫な石材のグループ。近世の城郭に用いたのはこのタイプが多いとされています。硬い石材くて丈夫な石材は、幕府や政府の土木事業や国の重要な建築物で重宝されました。近代以降横根沢石(現伊豆の国市)、小松石(相州西部)、江ノ浦堅石(現沼津市)などの名称で高級な石材として認識されるものもありました。現在でも小松石などは産出があります。

軟石

軟らかく加工しやすい石材のグループ。明治期大正期の民家や蔵などに用いられている例が多くみられます。軟らかく加工に適するこのタイプは、民間に出回りやすく、沢田石(現河津町)など高級なものは国の重要建築物の彫刻用などに使用されました。一般的に耐火性に優れるとされましたが、産地によっては火に弱く「弾け飛んでしまう」ものもありました。

火成岩系と堆積岩

伊豆半島やその周辺で切り出される石材に様々な種類や、堅石や軟石などの性質の違いがもたらされた背景には、伊豆半島の複雑な地質的成り立ちが極めて深く影響しています。伊豆半島とその周辺の石材は、ジオ的な観点からは火成岩と言われるグループ、堆積岩と呼ばれるグループに大別されます。よく伊豆石として耳にする安山岩は地表に噴き出たマグマが固まった岩石に分類され、火成岩グループに含まれます。この石材は硬いものが多く、利用する立場からは堅石という言葉につながったと考えられます。一方堆積岩は、火山灰などが地上や水中に堆積してできた岩石に分類され、このグループに含まれる石材は軟らかいものが多く、利用する立場からは軟石という言葉につながったと考えられます。

伊豆半島の成り立ちや岩石などについて詳しくは、伊豆半島ジオパークのサイトをご覧ください(https://izugeopark.org)。

明治末期大正期頃の主要な伊豆石と産地

執筆者:剣持